理学部の進学振り分りについて

       大学院理学系研究科天文学専攻

       教養学部連絡委員 岡村 定矩

 進学振り分けが新しい二段階方式となって三年目を迎える。理学部では、この新方式によってどのような影響が出るか注意深く見守ってきた。その結果、本来は学生の進学機会を広げるべく考案された方式が、特に定員の少ない小さな学科においては、必ずしもその趣旨に沿った結果にならない事例が出ていることがわかった。端的に言えば、進学振分けのいわゆる「ギャンブル性」を助長するかのようにすら見えるケースもあった。

 具体的に示そう(ただし、ここで取り上げるのは一つのモデルであり、現実の学科や進学者の事例に基づくものではない)。昨年度までの振分け方式に従って、ある学科の振分け定員が次のようであったとする。

○○学科 第一段階 理1 3名
理2・3 5名
第二段階 理1 約1名
理2・3 約3名

 まず、第一段階の振分けは、平均点(重みなし)に基づいて機械的に行なわれるため、理1からの志望者3名、理2・3からの志望者5名が機械的に決まる。この機械的な線引きが不合理に見えることが時折起こる。たとえば、理1からの志望者の第三位、第四位の平均点がそれぞれ70.1と70.0であり、理2・3からの志望者の第4、5、6位の平均点が70.1、65.8、65.3であったとする。機械的選抜の結果は、理1の第4位70.0点の人は入れなくて、理2・3の第5位65.8点の人が入れることになる。このような選抜は釈然としないと考える人が多いであろう。第二段階になるとこの状況は一層ひどくなる。理1・2・3全体としては約4名(この場合の[約」はその数プラスアルファという意味である)の定員があるが、理1から確実に入るためには、志望者の中で1位でなければならない。全体として4名の枠に入るのと比べて、これは著しくギャンブル性に富むことになる。わかり易くするために単純なモデルを用いたが、これに類した状況が現実に起こっているのである。

 このような状況に鑑み、理学部教務委員会で検討を重ねた結果、今年度から理学部の進学振分け準則を一部改訂したいとの結論になった。去る5月17日に開催された教養学部連絡委員会にこの改訂を提案し、了承を得られたので、この場を借りてその主な趣旨と内容を説明させていただく。改訂の趣旨は、理学部全体としての定員及び理1と理2・3の間の振分けは変更せず、また各学科も定員の変更は行なわないが、その枠内で、理1と理2・3の間の振分けに多少の自由度を持たせるということである。

 「進学振分け準則」は次のように改訂された。まず最初に、理学部全体としての枠を明示した。これは従来明示されておらずわかりにくかったものを明示しただけであり変更はない。変更の第一点は、第一段階振分けにおける各学科の受け入れ予定定員の理1と理2・3の内訳を「約○名」として約をつけたことである。各学科の定員総数は正確に決まっており、理学部全体としての定員226名とその内訳(理1から153名、理2・3から57名、:理科全類から16名)も決まっているので、「約」がついたからといって従来と大幅に違ったことが起こる訳ではない。各学科内で理1からの志望者と理2・3からの志望者の最低順位のところで1名程度の入れ換えが起こり得るということである。これにより、上に示した例のように著しい不合理が起きないよう配慮することができる。

 第二点は、地球惑星、化学、生物化学、生物(動物、植物)の各学科において、第二段階における理1と理2・3の区分をなくし「理1・2・3より約○名」としたことである。天文学科と地学科も改訂の趣旨に合わせて表現が変わった。第二段階においても理学部全体の定員約96名とその内訳(理1から約45名、理2・3から約6名、理科全類から約45名)は決まっているので、従来と比べてそう大きな違いが出る訳ではない。

 改訂された準則に基づいた「振分け条件の要点」はすでに学生諸君に配布されている。今回の改訂は、進学振り分けに伴うギャンブル性を少なくして、成績に従って志望学科へ進学できる機会をできるだけ広げたいと考えてとった措置である。学生諸君及び関係者の御理解をいただければ幸いである。


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